介護裁判新聞 3月号 

2019年03月11日

介護行政裁判

さて,本年3月19日福岡高裁で判決言い渡しがある。①佐賀県内の認知症対応型共同生活介護事業所が,2013年10月に行政庁から指定取消処分等を受けた事件の抗告訴訟の高裁判決である。1審の佐賀地裁は,一昨年全面敗訴の判決を受けている。

福岡高裁には佐世保市内の認知症共同生活介護事業所の処分取り消し訴訟等も係属している。長崎地裁で敗訴判決を受け,来る4月24日が控訴審第1回期日である。

③千葉地裁に係属中の処分取り消し訴訟は,4月22日進行協議が開催される予定だ。裁判官が交替し,追加証人尋問の決定がなされる予定である。

④長崎地方裁判所に係属する公法上の無効確認等の事件もある。これは,4月9日が3回目である。

⑤横浜地裁に係属する差し止めの訴えは興味深い。被告川崎市長から聴聞手続の撤回通知が届いた。処分をする蓋然性がなくなったという主張である。3月18日の第1回期日に出頭し,裁判を終結させる予定だ。実質勝訴である。

⑥青森市の訪問介護員の資格証偽造事件は,3月18日青森にて,市の担当者と面談する。東北遠征だ。


⑦熊本市のグループホーム職員による利用者の傷害致死事件は,3月28日聴聞手続が開かれる


傾向と対策

 行政庁は,各事件ともそれなりの処分理由を主張する。ただし,納得がいかない主張が目立つ。行政も,検討が十分ではないのに,処分に踏み切った感が否めない。

 事業者側が,法令を的確に指摘して,摘発された事実が誤認であるとか,それだけでは不十分であるという反論を試みる価値がある。事例⑤は,処分庁があきらめた。


"早期の対応の必要性 "

早期の対応とは,実地指導または監査のときから,それへの対応を始めることである。遅れると手遅れになる。

気がつくには,監査と指導の区別が不可欠だ。監査は,事業者側に,法令違反の疑いがあるとき,公権力によりおこなわれる行政調査である。行政処分の可能性が高い。行政は,警察のように直接的に強制捜査することはできないが,命令に従わないときには刑罰制裁がある。

監査から処分までの段取りを見通すことだ。

帳簿書類の提出に応じないとき,虚偽の答弁や報告をしたときは,指定取消原因となることに注意を要するが,行政庁も,事件の真相を早期に解明する能力があるとは言い難い。早期の適切な対応が必要だ。