介護裁判新聞8月号 介護事業所と障害者施設のスタッフに慰労金を支給

2020年08月17日

★介護事業所と障害者施設に従事者慰労金が支給されます

 国は,介護事業所などで働いている介護職員その他の人々,個人あてに慰労金を支給します。新型コロナ感染防止対策のいっかんとして,感染者がでた事業所ではひとりあたり20万円,感染者がでていない事業所では5万円の支給です。大分県などすでに支給された県もありますが,慰労金支給の状況は,都道府県ごとにバラバラです。佐賀県の場合,県のホームページを見ると,まだ申請期間もさだまっていないようです。

 この慰労金の趣旨はいまひとつ定かではありません。対象者は感染者がでた時期から本年6月30日までの間に,のべ10日間以上勤務した職員らとされていますが,介護職員に限らず,事業所に勤務する事務員,送迎車両運転者,清掃員なども含みます。一方,感染可能性がない本部職員などは対象外です。支給対は象正規職員,非正規職員,派遣などすべて含むとされています。

 兵庫県知事が,そんな意味不明な慰労金は支給しないと明言したことが話題になりましたが,撤回しました。

 慰労金の支給は,申請を必要とします。慰労金の支給決定は行政処分です。慰労金をもらうのは各職員本人ですが,申請は法人単位で行うよう通知されています。法人で,支給対象となる職員の名簿を作成して,都道府県に申請します。法人が各職員に代わって受領するため,代理受領の委任状をとるようにされています。ただし,申請の際に委任状の添付は不要(要保管)だそうですから,不徹底です。

もし,法人が職員のために慰労金の申請をしないときはどうするのか。法人が猫ばばしてしまったらどうするのか,さらには,架空の職員名簿を作成して不正受給したときはどうするのかなど,問題は山積みです。年末時期になれば,経営難の施設の場合は慰労金の支給を,賞与だと偽ることも考えられます。

 慰労金の支給が申請に対する行政処分だとすると,申請しても支給されなかった場合はどのような不服申し立てができるのか? 訴訟はありえるのか? など,法律上の争点もでてきます。

慰労金の申請手続は,全国一斉スタートではありません。各事業所で県のホームページで確認してください。

課税もされないわけですし,慰労金の申請が少なければ国のほうでも,新型コロナの弊害は少ないと誤解するおそれもありますから,事業者である法人は,必ず名簿を作成してこの慰労金の申請をした方がよいと思います。

新型コロナは猛暑の時期でも衰えを知りませんが,秋から冬にかけて再度感染拡大が予想されます。介護施設でのクラスターも発生していますから,介護に従事する人たちの士気を高める意味でも,全国で慰労金の申請をしましょう。