介護裁判新聞10月号

2020年10月12日

★新型コロナと損害賠償請求

 新聞報道によると,訪問介護事業所が利用者遺族から訴えられました。損害賠償金を請求されたのです。       

 理由は,訪問介護員が,新型コロナに感染していたのに利用者の自宅を訪問し,感染させて,利用者を死亡させたからとのことです。もちろん訪問した介護職員は,故意はありません。体調が悪かったようですが,新型コロナ感染を知りません。過失により感染させたというものですが,利用者は高齢社ですから,新

型コロナが重症化するリスクがあります。 

 だから,事業者は感染させないにする注意義務違反があるとして,事業者は民法上,雇い主として責任があるというのが原告・遺族の言い分です。

 一般に,結核など病院内感染のケースで病院の管理体制が問題とされた裁判例はあります。しかし,介護事業所が,新型コロナの感染予防に注意義務違反があるとして提訴された事例は初めてです。

 論点は,過失の有無です。「事業者が職員の新型コロナ感染および利用者に感染されることについてあらかじめ予見できたか」という認定・評価の問題です。

 法律でいう過失とは,通常は感染を予見できたのに予見しなかったという注意義務違反のことをいいます。事業者が新型コロナ感染を予見することができなかったときは,過失はない,つまり賠償責任もないということになります。

 裁判はこれからです。事業所が遵守すべき厚生労働省の基準には新型コロナのことを想定したルールはありませんが,今年になって厚労省は,新型コロナ対策に関する通知をつぎつぎと発出しています。(たいていファックス) 例えば可能な限り,テレワークを活用するように,感染症対策を徹底するよう指導していたわけです。

 しかし,訪問介護は,介護員が利用者のご自宅を訪問します。身体介護は,直接体に接触する介護ですから,感染防止につとめないといけません。

 多少でも,介護員に熱があったり,体調不良だったりするときは,訪問しないとか,交替するという方法もあります。新聞では,その介護員は,発熱したが熱がさがったので,訪問介護の仕事に復帰したようです。このように,過失(予見)の有無は困難な問題となります。(サガン鳥栖の監督のように)

 介護職員とPCR検査との関係も気になります。介護職員の全員がその検査を受ければよいのですが,その段階には到っていません。ですから,事業者が介護員にPCR検査を受けさせていなかったとしても,そこに過失があるとはいえません。

 裁判は始まったばかりですので,予測は困難ですが,事業者は損害保険に加入しますので,保険適用があれば和解の途も開けると思います。

 新型コロナは,高齢者が重症化しやすいことはみなさんご存知の通りです。このような悲惨が事件がおきることがないよう注意深く見守りたいと思います。