介護裁判新聞11月号

2020年11月12日

聴聞手続の戦術論的検証

 聴聞手続は指定取消処分や指定の効力停止処分をうける前提として,行政庁が,処分名あて人(事業者)の言い分を聞く機会です。残念なことにまったく活用されていません。聴聞で何をすべきか?何も知らない事業者が,聴聞を活用できるわけがアリマセン。聴聞を徹底して活用するには,実際の経験と厚生労働省令などに精通したうえで,以下のような戦術と工夫を実践することが必要です。

① 聴聞は簡単に終わらせるな

 行政処分を受けるか否か,最後の戦うチャンスです。残念なことに,事業者の一部は聴聞を終了したあとに相談に来られます。それでは聴聞を放棄したも同然です。何もいわないのは自白するのと同じです。わずか1時間で聴聞を終えるのであれば,行政のおもうツボです。

② 初回の期日は変更

 聴聞は,行政庁が通知を発してから期日まで二週間程度しかありません。聴聞通知書には予定される不利益処分の理由や適用法令が記載されています。その内容を検証するには,1か月あっても足りません。たった二週間では短すぎて何も準備をすることができません。準備期間を確保するために初回の期日の変更申請は不可欠です。聴聞時期が年度末の3月で多忙な時期であったとしても,絶対に期日の変更を申請しなければ負けますよ。

③ 証拠開示は徹底的に

 行政庁の保有する資料を見なければ事業者は何も対策がたてられません。法律(行政手続法)は事業者に資料の閲覧権限を認めています。謄写だってできます。まずは資料の閲覧・謄写を申請しましょう。そうして,行政庁の言い分を文書で確認すべきです。おもしろいことがわかるはずです。

④ 効果的な質問を

 聴聞では処分の内容や根拠について行政職員に質問を発することができます。具体的な法令に照らし強力な質問を準備することで行政庁の誤りをあぶりだします。処分を撤回させるため不可欠です。

⑤ 期日は続行

 行政処分は「法令」によって発せられますが,法令を慎重に検証するには時間がかかります。効果的な質問をし,行政庁の回答をさせるのですから,このように本気で争うのであれば3期日でも足りません。

⑥ 最終意見書は徹底した解析をしてから

 行政庁は人数をかけて事実関係を調査したうえで予定する処分を決めています。強力な行政庁と争うのであれば,事業者も行政庁を超える分析をしなければなりません。法令の解釈適用に行政庁のミスをみつけましょう。必ず行政庁の誤りが発見できます。事実関係に関して丹念に検証することで,行政庁の認定ミスを発見できます。

⑦ 全力を尽くして天命をまたない ことわざに人事を尽くして天命を待つというのがありますが聴聞はそれではだめです。もうだめだと思った時からがわたしたち法律家の腕のみせどころです。