介護裁判新聞4月号
電話相談・監査ってなんだ?
電話相談,スカイプ相談を始めた。東北地方から2件相談があった。 ひとつは,居宅訪問介護事業の方だった。介護員の資格証明書を偽造した者が,採用の際に,その偽造文書を示し,採用され,訪問介護の仕事に従事していたという事案。偽造した者は,4つの事業所で,訪問介護員の職に従事していたようである。
事業者は,訪問介護員の資格証明を確認し,介護員の職に従事させ,定期に,行政にも当該資格証写しを提出していた。
行政側では,不当利得にあたると主張するが,法令上の算定要件については特段の説明はしない。
先日,その関係で青森市役所に出向いた。今後の進展に注目したい。
あと一つの相談は,発達障害児支援・放課後デイの運営事業者から。すでに,監査,聴聞を終え,行政処分を受けたが,訴訟の実益はあるかという相談。聴聞では基準違反を認める陳述をし,行政処分は,6か月の新規利用の停止という効力の一部停止。これでは,争う実益はない。新規利用の停止というのは,もっとも軽い処分。
監査ってなんだ?
実地指導のとき,「うそをついたら虚偽答弁で取消しになるよ」と言われることがあるが,間違いだ。監査については,虚偽答弁や監査妨害が指定取消原因になるが,実地指導のときは,質問などの求めに応じなくても,指定取消しなど問題とならない。理由は,法23条の調査は,任意調査だから。介護保険法76条1項,78条の7第1項,23条,65条に規定がある。
厳しい事件が続く
任意調査は強制的な監査ではないから,うそを言ってもいいというわけではない。ただ,行政のほうでも,強制ではない調査なのに,ウソついたら監査になることはあるが,ただちに指定取消になるというのは間違いだ。
介護保険法は,裁判例が少ない。法令の解釈も,定まっていない事案がほとんどだ。例えば,実地指導の際に報告内容に虚偽があり,監査の時にそれが虚偽であると報告したら,虚偽報告にあるという下級審裁判例がある。だが虚偽報告が指定取消原因となるのは監査のときだけだ。通所介護の看護職員の配置について法令はその要件をはずしたのに,行政庁は勤務時間数が要件となると主張する,法令を正解しないというほかない。ただし,事業者からみた行政訴訟は壁が厚く,険しく,厳しい。