介護裁判新聞8月号

2019年09月19日

聴聞手続

 聴聞手続は,行政庁が,指定を取り消す処分をおこなう際に,事前におこなう義務のある手続です。この手続をしないで処分することはできません。

 未来を正確に予測して,あらかじめ争点となる事項を総合的に検討し特定し,利用可能な証拠を,準備しておくこと。それは予言者に近い神業ですね。。

 行政手続法に規定があります。本来は,憲法の保障する適正手続として,行政庁は聴聞における名あて人(事業者)の主張を十分斟酌したのちに最終処分を決める建前なのですが,実際は,行政庁は監査により集めた情報を検討した結果,処分内容を決めてしまっています。ですから,聴聞とは名ばかりの建前に終わっているケースが多いのです。

 特に,施設内の虐待が処分理由とされているときは,アウェーのレベルが数段上がります。虐待により利用者が死亡などしているときは,結論は決まっているようなものです。

 聴聞手続でなにをおこなうか。ほとんどの事業者さんは,情状酌量を申し立てます。が,これは誤りです。情状をくんでくれるというのは甘い考えです。

 聴聞の開始,実施,終結,処分通知の作成,処分に対する不服申し立て,行政訴訟など段取りがわかったうえで,その聴聞手続では,なにを反論,反証の必要があるのか。将来にどれだけ有益か予測できるかを検討すべきですしかし,これは。むつかしいです。というのは,事業者が争点を正確に把握していないのがほとんどだからです。

 未来を正確に予測して,あらかじめ争点となる事項を総合的に検討し特定し,利用可能な証拠を,準備しておくこと。それは予言者に近い神業ですね。。

放課後デイ

放課後等デイサービス事業者の方から相談を受けることが増えました。放課後等デイサービスは,児童発達支援事業のひとつですが,公的法人だけではなく,営利会社にも門戸が開放されました。サービスの対価として公費が支給される点で,介護事業や精神障害者福祉事業と共通します。

ということは,実地指導や監査(行政調査),指定取消しや改善命令(行政処分)の点でも,共通するということになります。

放課後等デイサービスや,障害者福祉サービス事業に対する行政処分が増えているようです。なかには,法令などの知識がない悪質事業者もいるかと思いますが,介護事業所に対する違法処分などと同様に,行政の側に法令の解釈・適用のミスがあることもあります。

これらの事業は,法令の仕組みが共通しています。サービスの基準や公費支給の算定要件を,法律に規定するのではなく,省令や大臣基準に委任しています。