2月号 ケアマネの運営基準減算の新展開

2024年02月09日

運営基準の新展開

 運営基準減算という制度がある。デイサービスで職員が不足した場合,介護職の人員基準を満たしていない場合には人員基準欠如減算という減算が適用される。一方,ケアマネジャーには運営基準減算という珍奇なものがある。

 平成30年3月改正により,ケアマネが利用者に契約の際,利用者から複数の事業所の説明を求めることができるという説明をしないときは,減算だとする規定もできた。

 簡単にいえば,ケアマネが何も知らない利用者を,特定のデイサービスに誘導したりして,癒着する危険性があることから,利用者はケアマネに,複数のデイサービスが利用できるという説明を求めることができますよ,そして利用者が自分でデイサービスを選べますよ,とケアマネは利用者や家族に説明して理解させなさいというものである。

 現状は「囲い込み」といって,有料老人ホームに居住する利用者は同じ建物にあるデイサービスしか利用できないという弊害があった。

そこで,ケアマネから説明させようとするものだが,さらに行政は「理解したことについて署名をもらいなさい」と指導することがある。そして,この指導に従わないケアマネ事業所に,過去にさかのぼり減算をさせているのである。

説明を受けて理解するようにさせるのは良いとしても,署名まで要求する法令はない。

争うべし

 行政のその説明についていちいち利用者の署名をもらえという根拠は,実は,厚生労働省の課長通知だ。厚生労働所の所轄の課長通知というのは,通達のことだが,日々,全国の行政機関(都道府県・市町村)に,ありとあらゆる課長通知が発出されている。

 居宅介護支援等の運営基準4条2項には「説明し,理解を得なければならない」と規定されているが,この課長通知には「文書の交付に加えて口頭での説明を丁寧に」のほかに「利用申込者から署名を得なければならない」と記載している。行政はこの「署名」ということを,ことさらに強調して,署名を得ていない場合は,運営基準減算にあたるという。

 実は,この減算をくらうとすごいことになる。利用契約時に遡るからだ。丁寧に口頭で説明して理解させていても,形式的な署名がないだけで数百万円の返還だ。そのケアマネ事業所が特定事業所加算をとっていた場合は,かるく数千万円の返還ということになる。

 これは争うべきだ。

 もうすでにこの運営基準減算により高額な返還をしてしまった事業所は,それは行政の不当な利得にあたるから民法703条による不当利得返還請求ができる。