5月号 福祉事業所の倒産
今年になって,居宅通所介護,障害福祉サービス,児童福祉サービス事業の倒産が増加している。
破産手続は,裁判所に破産開始決定申立てをおこなうが,通常は,代理人弁護士が破産債権者に対して破産申し立て通知を発するところからスタートする。
従業員は法令で人員配置が決められているから,利用者が少ないときも法定人員は必要だ。人件費はバカにならない。このように福祉サービス事業は利用者がいる限り,安定しているとはいえ,単に儲け主義ではなりたたない。
そこに,行政調査がはいって,高額な報酬返還請求がきたりすれば,倒産状態に陥ることになる。しかし焦ることはない。
現実的な課題
例えば定員25名のデイサービスを運営する法人が,従業員のミスから監査が入り,不正請求と認定されたとしよう。不正請求を理由とする不利益処分があると,そのあと,保険の不正利得徴収問題が起こる。例えば,過去5年分,50%返還だとすると,数千万円にものぼるケースが多々あった。さらに不正利得の場合,返還額は四割加算される。
だが,事業所は突然廃業することはできない。現に利用者がいるからだ。当事務所では,そのときは,廃業に伴い利用者の受け入れ先を確保することをアドバイスしている。
通常事業者が当月分のサービス費を回収できるのは2カ月先だが,それも確実に入るとはいえない。利用者がいる限り,従業者に対する人件費の支給も必要だが,行政は不正請求を認定すると,国保連を通じて報酬の支給をストップすることがある。
破産手続きの申立ては,多少の時間がかかる。債権者のリストアップだけでもたいへんだ。
法人の場合,債務超過が判明しなければ破産はできない仕組みだから,清算をするための決算貸借対照表によって資産よりも負債が大きいことを明らかする資料が必要だ。
倒産状態に陥っても,破産手続きに着手するか,あるいはそのままにしておくかは経営判断だ。債務超過になっても命まではとられない。じっくりと落ち着いて対処することが大切だ。
とはいえ,代表者の考えはそれぞれだが、法人を早々に清算して新たにやり直すことも可能である。選択肢はいろいろあるので,自分が適切と思うところを選んだほうがいい。
必ず道は開ける 。