5月号 過誤返戻の謎

2025年05月28日

「過誤返戻」とは、行政が介護サービス事業者に対し、介護保険給付の一部または全部の返還を求めるもので、高額な場合は1000万円を超えることもある。この返還は、本来、介護保険法22条3項に基づいて行政が強制徴収すべきだが、多くの自治体ではこの手続きを避け、過誤調整という便宜的な方法を取っている。

過誤調整では、事業者に過去の請求を任意で取り下げさせる形をとるが、事業者は行政処分を恐れて従わざるを得ない状況にある。最高裁は、強制徴収の法的手段がある場合にはそれを使うべきで、民事的手段やその他の方法は許されないとする「バイパス理論」を示している。

したがって、行政が過誤返戻という簡易的手段を使い、法に定められた手続を省略しているのは違法の可能性があり、実際に訴訟でも争いが起きている。