7月号 処分基準とは

処分基準とは
行政手続法12条は、「行政庁は処分の基準を定めて、それをできるだけ公表するよう努めなければならない」と規定しています。ここでいう「処分基準」とは、たとえば福祉サービス事業所の指定を取り消したり、その効力を停止したりする際に、その判断のよりどころとなるルールのことを指します。
行政庁が勝手に(恣意的に)処分を行うことは許されず、処分が裁判などで違法と争われた場合、その処分が法律に照らして正しかったかどうかを判断する必要があります。
そのとき、あらかじめ明確な処分基準がなければ、裁判所も判断ができませんし、行政庁の行為が適切だったかチェックする仕組みも機能しません。
したがって、処分基準を明確に定め、それに従って処分を行うことは、法の支配・適正手続を保障するうえで非常に重要なのです。
処分基準の異議
岸和田市は令和7年4月1日、「介護保険法及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の規定による行政処分等の処分基準」を公表した。
岸和田市の処分基準は、厚生労働省が数年前に地方公共団体に対して技術的助言として発出したもの(厚生労働省基準)を基本にしている。というか、厚生労働省基準とまったく同じである。ちがうのは、厚生労働省基準は介護保険法の指定サービス事業を対象としたが、岸和田市のそれは障害福祉サービス事業所も適用対象とする。
処分基準を定めて公表する趣旨は、事業者が行った不正行為等に対する行政処分等の実施及び程度を決定するための考え方を標準化することにある(1頁)。
前提として、人員基準違反、運営基準違反、人格尊重義務違反、不正請求、不正の手段により指定を受けたとき及びその他法令違反に区別され、そして、虚偽答弁や虚偽報告等については別に過重事由として位置付けられている。
「処分の程度」は指定取消、指定の全部効力停止又は一部効力停止という「態様」に区別される。
指定の全部又は一部の効力停止については、期間及び内容により区別される。期間は1月から12月、内容は、全部又は一部(新規利用停止・報酬請求の一部カット)に分かれる。
人員基準違反と運営基準違反は処分ではなく行政指導であり、行政指導たる勧告が原則となる。つまり軽い。
具体的にはつぎのように要約できる。
事業者について法令違反が確認された場合、それが人員基準又は運営基準に違反するだけのときは、改善せよとして改善勧告にとどまる。それを超えて違反内容が、不正請求・人格尊重義務違反・不正の手段により指定を受けたときにあたるとか、法令違反の程度が重いときは、費用順として指定の効力全部停止3か月とし、虚偽答弁・虚偽報告があったり故意であったり、組織的であったりなど
長期にわたるとかいう事情があれば、態様が過重されて効力停止期間が長期化するというもの。今後は要注意である。