10月号 佐賀県行政書士会で研修講師しました

2025年10月02日

特定行政書士の審査請求代理権が著しく拡大したことについて講演しました。

今回の法改正はこれまでは行政書士が関与した事案に限定されていたところ,その要件が撤廃されて,審査請求の可能な行政処分(不作為含む)に代理権が拡大されたものです。活用しない手はないと思います。

私見として特定行政書士が審査請求を使いこなすハードルはとても高いと思います。なぜかといえば,個別分野の法令が複雑なうえ,これまでも行政処分に不服申し立てをするケースが少なく,処分を撤回又は変更する例も少ないからです。

 とはいえ,せっかくのチャンスです。特定行政書士であれば,あらゆる分野の行政処分について審査請求代理人として活動することできるのですから,実績を積み上げることで克服できます。

 今回の講演では,福祉行政の審査請求分野を取り上げました。高齢者介護事業所,障害福祉サービス事業所は,全国でその数が増加していますが専門士業の支援が遅れています。事業者に対する専門士業の法的支援が不可欠なのですが,専門士業が行政不服申立てについてはほとんど関与していないのです。その理由はつぎのようなことだと思います。第一に,行政書士の事業としては,事業者に対する日常業務の指定申請代行だとか,加算など給付請求に限られていたからです。窓口での代行業務は,行政窓口で行政と仲良しないといけないのですから,行政処分を争うことはこれまでの代行業務と相反します。第二に,審査請求の技術的ノウハウがわからないことです。

 行政処分を争うときは,一定期間内に,本人から委任状をとって,審査請求書を書いて提出することになりますが,未経験の行政書士は,委任状の取り方や審査請求書の書き方がわからないと思います。実際は審査請求書に不備があると行政から「補正」を命じられますからも補正に従えば受理されます。課題は,審査請求がされたら審理員が任命されることと,行政庁から弁明書が提出されたときに内容を批判的に検証する能力があるかです。審理員はほとんどが行政庁の職員ですから中立とはいえませんので,審理員を説得するのは骨が折れます。弁明書は内容が専門的になりますから,学習しないと行政庁の弁明書を理解することができません。

 しかし,あきらめてはいけません。専門的な分野でも審査請求を繰り返すことにより,法令に慣れ親しめば意味はわかりますし,理解することはできます。一生懸命勉強するしかないのですが,努力を続けることにより,何年後かには,専門士業として,審査請求を遂行する能力を身に着けることは確実です。行政書士会で経験者交流を図ることにより知識や体験を共有するのも有効です。審査請求代理人業務を活用できる専門士業が増加することを期待しています。