12月号 次年度に向けて~行政調査は厳重になるか~

2022年12月19日

 行政庁が,指定をしているサービス事業者に対する取り締まりを強化しているようだ。

介護・障害福祉サービス事業は民間に開放されたが,民間事業者は,指定を受けて公費の支給を受けている。指定を取り消されたり,指定の効力を停止されると,たちまち収入が途絶える仕組みだ。

 行政の指導監督権限は強化されてきており,事業者の行政対応,つまり防御の必要性が増大している。

今, 障害者総合支援法(障害)や児童福祉法(児福)の行政対応事件が増加している。これは障害・高齢者の行政分野における事業者の数が増加していることに対応して取り締まりが強化されているのではないか。

 これからは,反撃能力を備えた福祉事業という視点が必要だ。

 福祉事業の分野については,1945年から1990年代まで恩恵的な福祉の措置だった。つまり,福祉を受ける高齢者・障害者(高齢者ら)は行政から恵みを与えられていたので,高齢者らは受け身の措置の対象だという考え方といえる。現在は,高齢者らは,人権を享有し権利の主体だ。だから,行政機関は,権利の主体である高齢者らに奉仕する立場だ, という考え方が一般化してきた。

 十数年前から私は,行政に対して反撃能力の乏しい福祉事業所の行政対応に尽力してきた。それは徐々に全国各地に広がっていった。この1年だけでも札幌市,茨城県,高崎市,広島県,熊本県と,各地の行政機関と聴聞などで意見を交してきた。

札幌では指定取消処分の予定が効力停止に軽減された。

茨城では聴聞が続いている。

高崎では聴聞とともに差し止め訴訟を提起した。

広島では聴聞手続が続行とされた。

熊本では年末の期日が変更され,第1回目の聴聞は来年1月に延期となった。

今月裁判の判決も出た。佐世保市との介護報酬返還訴訟である。なんと長崎地裁が佐世保市に対して,原告事業者への一部返還(返金)を命じた。一部勝訴判決だ。(双方控訴したので高裁へ続くが)

技術的には,行政処分前の弁護活動に軸足を移しつつある。監査など行政調査や聴聞手続中の案件が増加している。行政処分がでると裁判所による取消しでしか救済の道がない。それを考慮すると,行政調査時から介入すると反撃の可能性があるといえる。

来年は,コロナによる運営指導の延期もやみ,立入り監査も増加するだろう。

それにともない行政調査に関する事案が増加する。日頃からの準備が大事だ。