8月号 行政書士法改正

行政書士について、行政処分に関する不服申立ての代理人となることができる範囲が拡大された。これまでは、行政書士が関与した申請に対する処分に関する不服申立てに限り代理人となることができたが、改正後は、不服申立てが可能な処分等について、代理人として審査請求を行うことができるようになった。改正行政書士法の施行日は令和8年1月1日である。
課題も多し
その理由は、行政処分の対象範囲が極めて広いからである。
国が公表している資料によれば、地方公共団体に対して提起された審査請求は、令和元年で合計9,766件。このうち取消しを認めた認容件数は463件(4.7%)、請求棄却は7,002件、却下は2,261件、その他が40件であった。審理期間は、1年超が2,783件、1年未満が6,983件となっている。
では、裁判所で行われる行政訴訟はどうか。令和4年度の提起件数は1,912件で、終局判決のうち認容件数は170件(11.5%)。証人尋問まで実施した場合の平均審理期間は32.1か月で、なかには5年以上かかった事案が31件あった。
地方公共団体は全国に1,000以上存在するにもかかわらず、全分野を合わせた審査請求が9,766件というのは非常に少ない。
これは、案件の掘り起こしが十分に行われていないと見るべきであり、課題は「事件をいかに拾い上げるか」にある。
提案として、近年、行政処分が増加している分野を狙うべきだ。たとえば、介護、障害、児童福祉サービス事業の分野である。
日本は超高齢社会を迎え、民間営利企業もデイサービスなどの介護サービス事業に参入できるようになった。障害のある人の社会参加や就労支援を行う障害福祉サービス事業所についても、同様に民間営利企業の参入が認められている。さらに、発達障害等を持つ児童の療育を行う児童福祉サービス事業も同様だ。
一方で、これら福祉事業に民間営利企業の参入を認めたことにより、行政による指導監督は強化された。公費請求を行うためには「指定」を受けることが要件となり、その指定は厳格な基準に基づく。基準を遵守しない事業所は、指定の取消しという厳しい処分を受ける可能性がある。
ここに、行政書士会が審査請求代理人の範囲拡大に伴い、代理人活動を活発化させる理由がある。もちろん、事業拡大による収入増加が動機の一つではあるが、その背景には「法律による行政の原理の普及」と「行政処分によって不利益を受けた国民の権利救済」という大義名分も存在する。
とはいえ、審査請求代理人の範囲が拡大されたからといって、すぐに成果が出るわけではない。喜ぶのは、まだ早い。