9月号 障害福祉サービス事業所

障害者を対象とする事業所が増加している。障害者にもさまざまな障害の程度があるが、障害福祉事業は大きく分けると、施設で生活する障害者のための「施設系」と、就労を目的とした「就労系」とに分かれる。
障害者総合支援法は、特に就労に向けた制度を整備している。その中でも「障害者の就労移行支援」という制度がある。これは、障害者が社会で働くための就労への移行を支援する事業である。就労ができたとしても、それを継続できるかどうかが課題となるため、「就労継続支援」、さらに長期的に働き続けられるかを支援する「就労定着支援」など、段階に応じたきめ細かい対応が用意されている。
就労継続支援事業には「A型」と「B型」がある。A型は、労働契約を締結できる障害者を対象とし、労働の対価としての給与は最低賃金が保証されている。一方、B型は労働契約を締結できない程度の障害がある障害者を対象としており、作業に従事すると定額の工賃が支給される。全国的に増加しているのは、就労継続支援B型(以下、就労B型)である。
就労B型では、障害のある利用者を作業場などに通わせて作業に従事させ、利用者には工賃が支給される。また、事業者には訓練等給付費として公費が支給される。そのため、一般企業に就職できない障害者にとっては、貴重な労働の場を提供しているといえる。
しかし、就労B型事業所をめぐる行政トラブルも多い。
【行政トラブルの主な類型】
ア 虚偽申請
申請時に申告されたサービス管理責任者(サビ管)や従業員が、指定初月に実際には勤務していなかった場合で、「不正の手段による指定」とされるケース。
イ 不正請求
架空請求、水増し請求、加算違反や減算義務違反など、訓練等給付費の請求に不正があったとされるケース。
ウ 人格尊重義務違反
障害者は虐待被害にあいやすく、施設内で職員が利用者に暴力をふるうなどの虐待があったケース。
エ 人員基準違反
法令で定められた従業者数などを満たしていないケース。
オ 運営基準違反
運営基準を遵守していないケース。
行政は、ア〜ウの違反については、標準的処分として「指定の効力全部停止3か月」とし、加重・軽減事由を勘案して最終的な処分を決定する。エ・オについては、原則として「勧告」を行い、加重事由がある場合にはそれを考慮して最終的な対応を決定する。
就労B型は全国的に事業所の乱立傾向にあるため、法令遵守の重要性が高い。一方で、行政による重すぎる処分の傾向も見られ、より慎重かつ適正な指導・監督が望まれる分野である。