12月号 2026年に向けて

2025年12月02日

 団野法律事務所の福祉行政の対応について、2025年もさまざまな出来事がありました。

 高齢者介護事業では、監査対応の困難事案に加えて、行政訴訟(甲府地裁・さいたま地裁)も見られました。障害福祉では、就労B型を中心に行政訴訟(福島・京都・神戸・千葉地裁)が続き、放課後等デイサービスなどの児童福祉でも、行政訴訟(広島地裁)のほか、法人清算、監査・聴聞対応などさまざまな行政過程で多くの問題が生じています。

取り扱う事案は、運営基準違反・人員基準違反・不正請求・人格尊重義務違反・虚偽申請などさまざまですが、共通しているのは行政と事業者の「力関係」の問題です。行政庁は事業者に対する指定・監督権限を有している一方、事業者はその監督を受ける立場にあり、この構造が行政権の濫用を生みやすい土壌となっているのです。

  行政処分に対しては原則として不服申立てが認められていますが、これはあくまで事後的な救済手段にすぎません。事前救済として聴聞・弁明手続が設けられている分野もありますが、行政内部の手続である以上、現実には十分に機能していない面があります。

 こうした状況に対処するには、第一に不服申立て制度の充実、第二に不服申立て以外の事業継続方法を探ることが重要です。

  第一の不服申立ての充実に関しては、来年から特定行政書士による審査請求代理権が拡大されることが挙げられます。

 第二に不服申立て以外の方法としては、別法人による新規指定申請など、既存制度の枠内で事業を存続させる手段が考えられます。

  特定行政書士の審査請求代理は法改正によるものですが、実務面では行政書士側に相当の努力が求められます。これまで経験のない分野・手続に代理人として関与することになるため、代理人としての役割を含め、新たな取り組みが必要です。佐賀県では、実務OJTを通じて特定行政書士の代理人活動を支援する新たな企画も進められています。審査請求に精通した特定行政書士が増えることは、審査請求制度の活性化にもつながるでしょう。

  不服申立て以外の方法としては、行政処分を受け入れたうえで、同じ事業を新たな法人で再構築するという選択肢もあります。再度の指定を取得する必要はありますが、要件を満たせば、従前の事業所に固執せず新規事業として再スタートすることが可能です。旧法人については清算などの手続が必要になりますが、民間企業として培った経験を活かし事業存続を図ることが期待できます。

 2026年に向けて、経験と技術をさらに磨き、より質の高い法的サービスを提供できるように、また変化する福祉関係の法律に対応し、常に最善の解決策を提案できるよう日々精進していきたいと思います。