介護裁判新聞5月分 テレワーク導入の契機

2020年05月08日

★臨時的取り扱い

ただ事業者の方は疑心暗鬼だ。行政に信用がないのである。これまで行政にいじめられてきた経験があるから。事業者は,行政機関の指示のとおりにすると,あとで,違うことを言われるという不安が強いのである。情けない実情だ。

通所と訪問をミックスできるのは,小規模多機能型サービスだ。小規模多機能型は,感染諸対策に使える唯一の柔軟な事業所といえる。通所できる利用者は通所,自宅から出られない利用者は訪問,同居人に感染者がでたときはお泊まりもできる。なんと便利な介護施設か。

新型コロナウイルス感染拡大を契機として全国で585カ所の事業所が休業した。佐賀県内でも112カ所が休業したようだ。介護事業は民間の事業だし,行政から委託をうけているわけではないので,休業は自由だ。しかし,休業が拡大すれば,高齢者介護福祉は破綻する。なんとかしなければならない。

新型コロナウイルス感染拡大を受けて,厚労省が法令どおりの複雑な基準を一部停止した。介護支援専門員(ケアマネ)は関係者を一同に集めて行うサービス担当者会議(サビ担)をせず,電話やメールで代用できる。月一回以上利用者に面会しておこなうモニタリングも同様だ。テレワークの導入ともいえる。これまでも,サビ担やモニタリングはどうして必要か疑問を唱える声もあった。しかし行政は,サビ担の省略や,利用者面接を欠いたモニタリングには厳罰を与えてきた。行政処分と介護報酬の返還だ。

改革のためにこのようなテレワークは継続すべきだ。新型コロナウイルス感染は長期化するだろう。インフルエンザも心配だ。

 通所介護と訪問のミックス運用も今だけの措置ではなく、コロナ後も継続すべきだ。臨時的取り扱いでは,通所できない利用者もいるだろうから,その人について訪問介護に切り替えることができる。通所介護事業者が,並行して訪問介護ができるのだ。訪問介護員の資格はこの際必要がない。無資格者による訪問介護は,これまでならば,処分理由だった。たいした変わり様だ。加えて,通所介護の人員のうち,一部が訪問介護にまわると,通所の人員を満たさないことになる。今はそれもOKだという。人員を満たさないとこれまでなら,行政処分だ。介護報酬の返還も半端な額ではない。これもたいした変化だ。

得所にしろ,訪問にしろ,サービスは介護計画に基づく必要があるが,臨時的取り扱いによれば,介護計画の変更・書き直しは後回しでも良い。利用者の同意についても,同意書なとば後回しで足りる。万事がスピード感をもってやれということだろうが,この扱いは潔い。