介護裁判新聞9月号 介護保険法の作り方講座

2020年09月23日




自治体は,平成24年の改正により,地方議会を通じて基準に関する条例を作らなければならなくなりました。ただし,厚生労働省のつくった人員,設備,運営基準に従うものとされていますから,自治体固有の条例をつくることは,原則としてできない建前です。ただし,ローカル・ルールと称して,しばしば自治体だけのルールを事業者に押しつけることがあり,各地で,問題となることがあります。

このような事業者ルールは,自治体の条例や厚労省でつくられていますが,基準の内容は,事業のタイプごとに異なります。内容も,わかりにくくてとても複雑です。

事業者に軽微な違反があるときも,過去に支給された介報酬の5年分を返納など言われることがありますが,納得しがたいことも多いです。違反があるのかないのか微妙なこともありますが,行政処分を受けるかも知れないというこわさがあります。事業者としては,納得がいかないときは,専門家に相談することをお勧めします。

★介護保険法の作り方講座

2000(平成12)年にスタートした介護保険法は,超高齢化社会に間に合わせるために検討未了のままスタートしました。そのため改正がしょっちゅうあります。

指定制度を採用したため,株式会社とか営利法人が指定を受けられるよう,行政はその門戸を開放しました。

これは国民から保険料(公金)を徴収して,介護サービス事業者に対価を支給するシステムです。会社に任せた反面,公金を支給しますから,遵守すべきルールを基準化しました。ルール(基準)の中身は,法律ではなく,ほぼ厚労省に丸投げです。なぜなら国会でのルール作りは無理だったからです。

事業者が順守するルール(基準)は,人員,設備,運営基準の三本立てです。

人員基準というのは,事業所に,介護従事者などを,どのくらい配置するかというルールです。頭数で数えることもありますが,常勤換算方法というやり方もあります。これは,営業時間に勤務する従業員の勤務時間数を8時間で割り算する方法です。パートも含みますから,延べ時間が24時間だとすると,24÷8=3人というふうに算定します。食事時は大勢の職員がいるが,昼寝時は1人という柔軟な配置ができます。サービスの質ではなくヒトの量です。

設備基準というのは,どんな部屋があり,スペースは高齢者一人あたり何㎡いるかというようなことです。

運営基準というのは,運営に関するいろんな場面に適用されるルールです。利用開始のとき,契約書面を作成すること,要介護高齢者のリクエストを確認すること,一人ずつ介護計画をたてること,定期的にモニタリングすることなど様々です。

介護行政では,事業者に基準に関する関係法令の改正などがあると,集団指導をし,個別に実地指導をします。違反行為があるときなどは,勧告や命令をし,重大な法令違反があるときは行政処分をすることもあります。